人の肌にも菌は棲み着いています。菌というとどうしても悪いイメージがあり、不潔だったり、肌荒れの原因になってしまうイメージがあるのですが、
実はそうではなく、肌の皮脂膜やバリア機能、潤いを守ったり、弱酸性に保って、健康的な肌状態を保ってくれるのは菌でもあります。
今回はそんな肌にとっていい善玉菌、逆に悪い悪玉菌について、その種類や、善玉菌の増やし方、育て方、悪玉菌の減らし方などについてご紹介してみたいと思います。
1.肌の常在菌とは?
人の体内には多数の菌が存在し、その中でも有名なのが乳酸菌やビフィズス菌といった腸内細菌だと思うのですが、
人の皮膚にも菌は存在し、それを「皮膚常在菌(ひふじょうざいきん)」といいます。
また、常在菌の数というのは腸内では実に600兆個もの菌が存在するといわれ、
皮膚では、約1兆個もの常在菌が存在するといわれています。
2.肌の常在菌の種類は?
常在菌と一口にいってもその種類は様々なものがあり、
例えばその主なものとして、
・黄色ブドウ球菌
・アクネ菌
・マラセチア真菌
などがあります。
3.肌にいいのは善玉菌である表皮ブドウ球菌
近年では、このような肌の常在菌への注目も高まっていて、常在菌が存在することにより肌が守られ、肌も丈夫になり、肌にとって大切なものであるとして注目されています。
ただどんな常在菌でもいいというわけではなく、肌にとっていい常在菌は善玉菌といわれるもので、
その代表とされるのが
です。
表皮ブドウ球菌というのは、グラム陽性球菌の一種であり、
そんな表皮ブドウ球菌は表皮の皮脂や汗を栄養源とすることで繁殖する菌となっています。
4.善玉菌は肌でどんな役割を果たしている?
ではこのような善玉菌が肌に存在することにより、肌ではどのような働きをしてくれるようになっているのでしょうか。
●健康な皮脂膜を作り、肌を守ってくれる
表皮ブドウ球菌をはじめとする肌にとっての善玉菌には、皮脂をその栄養源とし、それをグリセリンと脂肪酸とに分解する役割も果たしており、
そのことによって、肌にとって必要となる皮脂も作り出してくれるようになっています。
そして健康的な皮脂膜が保たれることで、肌も外部刺激などから守られるようになります。
●肌を弱酸性に保つ
肌で脂肪酸が増えることにより、肌は弱酸性の状態に保たれるようになり、
肌本来の健康的な状態へと導くのに大きな役割を果たしてくれるようになります。
そして弱酸性に保たれることで肌のバリア機能も保たれるようになります。
●NMF(天然保湿因子)を作り、肌の潤いを保つ
他にも、皮脂と表皮ブドウ球菌とが混ざり合うことにより、肌の上では「NMF」が作り出されることになります。
そんなNMFは、「天然保湿因子」とも呼ばれるもので、肌の潤い成分となり、表皮の潤いを保ち、肌の乾燥も防ぐのにも非常に重要なものとなっています。
●バリア機能を守り、肌を丈夫に保つ
そのように肌が弱酸性に保たれたり、皮脂膜や潤いも保たれることによって、肌のバリア機能も健やかに整えられ、
●悪玉菌の繁殖や侵入を防ぐ
善玉菌が増えることによって、肌の上で悪玉菌が生息していたとしても、その繁殖も抑えられることになり、
善玉菌と悪玉菌とのバランスを健康的に保つことができるようになります。
さらに善玉菌には、悪玉菌の侵入も防ぐという働きもあり、悪玉菌の繁殖が原因となるあらゆる肌荒れや感染症、アトピーなどのアレルギーも防ぐことができるようになります。
5.肌に悪い悪玉菌もいる?
表皮ブドウ球菌に代表される善玉菌がある一方で、肌へと悪影響となる悪玉菌もあります。
その代表ともいえるものが、
・マラセチア真菌
という2種の常在菌です。
●黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌というと、腸炎などを引き起こす原因となり、感染症の原因菌というイメージがありますが、
人の肌でも生息することができ、繁殖してしまうことで、肌に炎症を起こしたり、ひどいかゆみの原因にもなります。
さらにひどくなってしまうと、化膿したり、「とびひ」を引き起こす恐れもあるものです。
●マラセチア真菌
マラセチア真菌もまた、肌にとっては悪玉となる菌で、それは、酵母菌、カビの一種なのですが、
それほど繁殖せずに、また、表皮ブドウ球菌といった善玉菌も多く存在して、バランスの取れた状態であれば、さほど問題となる菌ではないのですが、
こちらも繁殖してしまうことにより、脂漏性皮膚炎を引き起こしたり、かゆみ、痛みも伴う炎症を引き起こす原因ともなります。
また、頭皮で繁殖するとやはり脂漏性皮膚炎やかゆみ、フケの原因となります。
そしてこのようなマラセチア真菌には、わかっているだけでも、ダーマティス菌やシンポディアリス菌、グロボーサ菌、ファーファー菌、レストリクタ菌という5種類のものが存在し、
特に、ファーファー菌が毛穴に入って繁殖することにより、ひどい炎症を起こすこともあり、
また、マラセチア真菌自体、近年の研究において、アトピーを悪化させる要因ともなるものであるということもわかっています。
6.アクネ菌は悪玉でも善玉でもない?
アクネ菌というと、ニキビの原因となり、悪玉菌というイメージがありますが、
アクネ菌自体は、いわゆる「日和見菌」と呼ばれるもので、
それ自体は、善玉菌である表皮ブドウ球菌と同じように、皮脂を栄養源とし、
肌へと健康的な皮脂膜を与えてくれたり、肌を弱酸性に保つ働きもしてくれます。
ところが、アクネ菌は空気を好まないという性質があるために、空気の少ない毛穴の奥へと入り込むという習性のある菌でもあります。
そのため毛穴の中で繁殖しやすくなっており、
それでも、健康的な肌であれば問題なのですが、
例えば、食生活の偏りやストレス、ホルモンバランスの乱れなどによって、皮脂が過剰に分泌されることになれば、毛穴の中で皮脂が詰まりやすくなり、
アクネ菌がそこで異常に繁殖してしまうことになります。
アクネ菌の異常繁殖は肌の上で脂肪酸の異常発生も引き起こしてしまい、その脂肪酸が肌へと刺激を与え、炎症を起こしてしまうことになります。
それがニキビや吹き出物につながってしまうのです。
つまり、アクネ菌はその繁殖の仕方によって善玉菌にも悪玉菌にもなるものとなっています。
7.美肌を保つ善玉菌を育てる方法
このように見てみると肌の上で善玉菌が増えることにより、肌は芯から健康的に保たれ、
自然と潤いも保てるようになり、特別なケアをしなくても、本来の健康的で美しい素肌も保つことができるようになるということがわかります。
ではそんな善玉菌を肌の上で育て、増やすにはどうすればいいのでしょうか?
そのためにはまずは、
●肌を保湿して乾燥させない
表皮ブドウ球菌をはじめとする善玉菌というのは乾燥を嫌います。
乾燥することにより、その活動は弱まってしまいますので、毎日のスキンケアでは、洗顔後にはきちんと化粧水で水分を与えてあげて、
その後は、乳液やクリームなどの油分が含まれているスキンケア用品で、与えた水分を閉じ込めて、潤いを守ってあげるようにしましょう。
●皮脂を取り過ぎない
表皮ブドウ球菌は、肌で分泌された皮脂を栄養源とし、繁殖します。
そのため、肌の表面では適切に皮脂が保たれている必要があります。
最近では、清潔志向から洗顔をしすぎてしまったり、体の洗いすぎなどで、皮脂が足りなくなっている方も多く、
そのことで善玉菌が繁殖しづらい肌環境になっている方も多くなっています。
もちろん、洗顔不足や体の洗浄不足は、別の肌トラブルにとながってしまいますので、不潔にするのはよくありませんが、
洗浄のしすぎにも気をつけて、洗顔であれば、多くても、朝と晩の2回の洗顔でも十分に汚れは落とすことができるようになっていますし、
体を洗うのも、1日に1回が適当でしょう。
●クレンジングを減らす、クレンジングをしない
特にクレンジングは、落ちにくいメイクを落とす目的で使われることから、洗浄力の強いものが多くなっています。
やはり洗いすぎによって、必要な皮脂まで落としきってしまうことも多く、善玉菌を減らしてしまうことになります。
ですから例えば、メイクが薄い時にはクレンジングをせずに、洗顔料だけで落とすようにしたり、
ポイントメイクにだけクレンジングを使うようにしたり、
また、日ごろから洗顔料だけで落とせるような薄いメイクを心がけるといったこともいいかもしれません。
●防腐剤無添加の化粧品を選ぶ
化粧品やスキンケア用品には、その品質を保つために防腐剤が使用されているものが多くあります。
そんな防腐剤の中には、殺菌力の強いものもあり、雑菌の繁殖を防いでくれる効果もあって、化粧品を長持ちさせてくれるようになっているのですが、
それと同時に肌にとって必要な善玉菌も死滅させてしまうものもあります。
●善玉菌(美肌菌)を育てる化粧品を使用する
近年では、そんな肌にとっていい善玉菌の働きにも注目が高まっていて、
そのような善玉菌を美肌を保ってくれる菌ということで「美肌菌」と呼ばれることもあり、
「美肌菌」を育てることに焦点を置いた化粧品やコスメも提供されています。
そのようなものには、保湿力が高く、善玉菌が好む肌環境へと整えてくれるものであったり、
善玉菌が好む成分が配合されているものなどもあり、毎日のスキンケアを普通にしているだけで善玉菌を育ててくれるようになっています。
ですから、日ごろスキンケアや生活習慣などで、善玉菌を減らしてしまっているかもと心配な方は特にこのような化粧品もおすすめです。
●軽い運動で汗や皮脂を適度に分泌させる
運動と善玉菌とは一見関係ないように思えますが、毎日適度な運動をすることによって、汗や皮脂も分泌されやすくなります。
そのような汗や皮脂というのはサラサラとしていて、特に善玉菌の好むものであり、善玉菌が繁殖しやすい状態へと肌を保つことができるようになります。
逆に日ごろ運動不足の方の場合、汗や皮脂の分泌もあまり行われないことから、老廃物なども蓄積され、分泌されるとどろっとしていたり、悪臭も放つこともあり、
そのようなものは逆に悪玉菌が好むもので、悪玉菌の繁殖の原因にもなってしまうものでもあります。
そのため日ごろから、軽い運動を続けて、質のいい汗や皮脂を出すようにしておくことも大切でしょう。
8.悪玉菌を増やさないことも重要、その方法は?
善玉菌を増やすとともに、悪玉菌を減らしておくことも美肌や健康的な素肌を保つためには重要です。
そのためには、例えば、
●表皮ブドウ球菌などの善玉菌を増やす
表皮ブドウ球菌などの善玉菌には、悪玉菌の繁殖を抑えたり、侵入するのを防いでくれるといった働きがあり、
そのため、善玉菌が多く肌に存在するだけで、悪玉菌の数も抑えることができるようになります。
善玉菌を増やす肌環境を保つようにしましょう。
●肌をアルカリ性に傾けすぎない
黄色ブドウ球菌をはじめとする悪玉菌、アクネ菌もまた、アルカリ性を好むという習性があります。
そのため、肌がアルカリ性に傾くことによって悪玉菌が繁殖しやすく、肌トラブルにつながりやすくなります。
通常、人の肌というのは弱酸性に保たれているので、悪玉菌が繁殖しづらいのですが、
例えば、石けんや洗顔料で洗顔することで人の肌も一時的ではあるのですがアルカリ性に傾きます。
●洗顔のし過ぎ、洗浄力の強い洗顔料でアルカリ性に強く傾く
アルカリ性に傾いても普通は、しばらくすると自然に弱酸性に戻っていくものなのですが、
例えば、洗顔のし過ぎや、洗浄力の強い洗顔料を使用することにより、弱酸性へと戻るのに時間がかかってしまい、
必然的に、アルカリ性に傾いている時間が長くなってしまいます。
その間に悪玉菌が繁殖してしまうこともあります。
●洗いすぎや洗浄力の強い石けん、洗顔料の使用は控える
●洗顔後はすぐに化粧水を付けて弱酸性に戻してあげる
ですから、顔、体の洗いすぎや洗浄力の強い石けん、洗顔料の使用は控えるようにし、
洗顔後にはすぐに弱酸性の化粧水で保湿することによって、弱酸性に戻すのも早くなりますので、すぐに化粧水を使うといったケアも心がけられると良いでしょう。
他にも、紫外線を浴びることでもアルカリ性に傾きやすくなりますので、紫外線をできるだけ浴びない、紫外線対策をきっちりと行うのもいいですね。
●皮脂の排出をスムーズにしておく
通常、健康的な素肌であれば、毛穴で皮脂が分泌されても、スムーズに排出されて、溜まることはありませんし、
そんな皮脂が肌の表面を覆い、皮脂膜として肌を守ってくれるようになります。
ところが、生活習慣やストレス、あるいは、ホルモンバランスの乱れなどによって肌の環境が悪化してしまうと、そんな皮脂が上手く排出されずに、そのまま毛穴に溜まってしまうことがあります。
皮脂の過剰な分泌を招いてしまうこともあり、そうなるとさらに毛穴に溜まりやすく、悪玉菌を繁殖させてしまう要因となります。
そのように肌環境が悪化する原因としては様々ありますが、例えば、食生活の偏りだったり、
睡眠不足やストレス、ホルモンバランスの乱れ、洗顔のし過ぎ、不十分な洗顔などの誤ったスキンケアなどがその主な原因として考えられます。
ですから、そのようなことを避けて、肌環境を健やかに整え、皮脂の排出をスムーズな状態に保っておくことも大切です。
9.いつものケアが善玉菌を減らしている?こんなことにも注意!
善玉菌を増やす方法は色々とあって、こちらでご紹介したことを全て試してみても、肌の状態が改善されないといった場合には、
もしかしたら毎日のケアでついやってしまいがちで、気付かないうちに善玉菌を減らしてしまってることもあるかもしれません。
例えば、
・朝も洗顔料などで洗顔している
・ニキビ用など、殺菌作用の強い化粧品を使用している
・アルコールが配合されたさっぱり系の化粧品を使用している
・油取り紙などを頻繁に使用している
このようなケアをされている方も、善玉菌を減らしてしまってることにもつながっていると考えられますので、
思い当たる方は、このようなことを見直してみてもいいかもしれませんね。
10.まとめ
いかがでしたか?
菌というと、何だか悪いイメージがあって、特に肌に菌が繁殖することで、不潔で、肌荒れの原因にもなってしまうと考えがちですが、
菌の中には、肌を皮脂膜やバリア機能、潤いを守ってくれたり、肌を弱酸性に保って、雑菌の繁殖を防いだり、侵入を防いでくれる「善玉菌」も存在するんですね。
そんな善玉菌は逆に肌の健康のためにも必要不可欠といえるものです。
ただ一方で、肌の炎症やかゆみなどの原因、肌荒れの原因にもなる悪玉菌も存在していて、
健康的な素肌や美肌を保つためには、その善玉菌をいかに増やして、悪玉菌を減らすかが鍵となり、
こちらでは、そのために必要なことを様々にご紹介しましたので、ぜひ、実践なさって、菌と上手く付き合いながら美肌を保っていきましょう。
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